「旦那、御出馬だ、御出馬だ」小粒な体に似合わぬ大声でとび込んできたのはおしゃべりの伝六、その声にむっくり体を起した美丈夫は言う迄もなく江戸一番と謳われる顔よし、腕よし、推理よしの名同心・むっつり右門である。殺しの現場は昼なお暗い下谷の煉塀小路の榎妙見境内、殺されたのは身分あり気な侍だという。とそこへ第二の殺人事件発生の報せが届いた。常日頃からとかく功を急ぎたがる筆頭同心・あばたの敬四郎ことあば敬が、下っ引きのちょんぎれ松をひきつれ今度こそはと榎妙見にすっとんだ後、右門は伝六ともども第二の殺人現場・柳原の髭すり閻魔堂に姿を現した。カッと目を剥き虚空を掴んで倒れているのはこれまた主持ちらしい身分あり気な侍…。(C)東映