薄化粧
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古びた鏡に向かって化粧をしている男がいる。その男―板根藤吉。丹念に眉墨を塗り、鳥打帽を真深に被って、まるで他人のような自分の顔をまじまじと見つめる……。卑小な人間欲望の切なさといらだち、更に底知れぬ人間の獣性とそれを突き抜けて求める情念のやさしさ、しがらみの哀しさを愛情をこめてしみじみと、そしてしたたかに描く、壮大な男と女の愛のドラマ。©1985 松竹株式会社