それはあまりにも突然で奇妙な出来事だった。若き双子の姉弟ジャンヌとシモンの母親ナワルが、ある日プールサイドで原因不明の放心状態に陥り、入院後に息絶えてしまったのだ。さらに姉弟を驚かせたのは、ナワルを長年秘書として雇っていた公証人のルベルが読み上げた遺言だった。ルベルはナワルから預かっていた二通の手紙を差し出す。それは姉弟の父親、兄それぞれに宛てられたもので、今どこにいるのか分からない彼らを捜し、その手紙を渡す事が、母の遺言だった。しかし兄の存在など初耳で、父はとうの昔に死んだと思い込んでいた姉弟は困惑を隠せない。シモンは生前自分に心を開いてくれなかった母の遺言を「イカれてる!」と吐き捨てる。一方、ジャンヌは遺言の真意を知る為に、若き日の母の写真一枚を手がかりに、彼女の祖国を訪ねる事を決意する。いったい母が父と兄に宛てた手紙には何が記されているのか? そして母が命を賭して、姉弟に伝えたかった真実とは…。