山あいの温泉街で旅館「あかつき館」を営む母の明美・父の光一と暮らす、小学5年生のサトシ。人口の少ない町では誰もが顔見知り。小学校の校庭の隅では、いつも風変わりな青年ドノが声を出して漫画を読んでいる。そんな環境の中、サトシは猛烈な早さで体が大人に変わっていく女子たちを恐ろしく感じ、精神的に成長しない男子たちを冷めた目で見つつ、否応なしに変わっていく自分の体に抵抗感を抱く日々を送っていた。また女に目のないサトシの父・光一が隣町の女性と密会しているところをたまたま目撃してしまい、大人に対しての嫌悪感を募らせていた。初春のある日、従業員用の寮にサトシと同じ11歳の美少女・コズエが母親と共にやってきた。コズエも母も無表情で、人との言葉のやりとりにもどこか不自然なところがある。サトシのお気に入りの場所、城跡に立つ大木の根元にコズエが現れ、サトシが落ち葉を拾って投げると、コズエも真似して、落ち葉をすくっては空中に撒(ま)く。そんなつかみどころのないコズエに最初は困惑していたサトシだったが、次第に彼女に魅せられていく。そしてコズエから「私とオカアサンは、ある星から来たの」と“大きな秘密”を打明けられる―。(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)