江戸時代初期、大規模な切支丹一揆の島原の乱(1637-1638)が勃発する。切支丹弾圧の最後の抵抗。三万七千の農民たちに対し、徳川幕府は十二万にもおよぶ軍勢を動かす。これは、天草四郎の切支丹伴天連の妖術への恐れが生んだ苛烈なまでの反応だった。百日をも超える籠城の末、一揆勢は一人残らず討たれ、すべての者の首が斬り落とされた。そこに神はいなかった…。十余年の時が流れ、天下は三代将軍徳川家光の治世。その安泰の世に、徳川頼宣は野心と不満を抱えていた。南海の竜と呼ばれる気性の激しさで、次期将軍の座を狙いつつも、到底それが難しいことも熟知していた。そんなある日、鷹狩りに出掛けた頼宣の前に、死したはずの天草四郎が姿を現す。島原の乱で死んだはずの四郎は、不敵にも頼宣に天下を取らせてやろうと申し出る。半信半疑の頼宣に、四郎は秘術・魔界転生を披露する。洞窟の中の祭壇には、その胸に逆十時の痣を持つ忍体となった裸身の女が拘束されていた。四郎の祈祷とともに女体はうねり弾け、その内部から何者かが出てこようとしていた。女体が破裂したかに見えたその時、そこに現れたのは、柳生流の豪傑・荒木又右衛門であった。いまや魔界衆の一人となり、いま一度この世に蘇ったのであった。そして、四郎に付き従うクララお品は驚く頼宣に、ただ無念の思いがこの世に転生するよすがとなっていることを語る。さて、さらなる魔界衆を転生させるという計画のために、紀州藩に集められる女たちの中に、柳生衆のおひろとお雛の姉妹がいた。というのは、紀州藩の動向をいぶかしむ柳生衆が密かに探りを入れるためであった。だが、紀州藩より深手を負いながらも、脱出してきたお雛の口から恐るべき企みが明らかになる。遂に、柳生十兵衛が動き出す。紀州藩の陰謀を阻止するため、徳川頼宣を追い、江戸へと向かう十兵衛の前に立ちはだかるのは、蘇った剣豪たちであった。荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、宮本武蔵、そして十兵衛の父・柳生但馬守…。さらに十兵衛を魔界衆にすべく暗躍する四郎。そして、柳生十兵衛は剣豪たちと斬り結ぶ地獄巡りの中で、いつかしら己の剣に目覚めていくのであった…。