親友のテニスクラブオーナー中田の依頼で、長崎の新設クラブのコート開きに顔を出した人気絶頂のプロ・テニスプレーヤー三村浩司は、その夜かなり酩酊して、誘われるまま鳥飼陽子の店で同席したジューンという女を抱いた。帰京した三村を見知らぬ客が待ち受けていた。岸井と名乗るその男は、三村とジューンの情事の写真を突き出し、示談金3000万円を支払えと脅迫する。だが、約束の日、岸井と会った三村は、怒りにまかせて鉄拳をふるい、1 0 0万円の小切手を叩きつけた。たちまち週刊誌に書きたてられるスキャンダル記事。人気プレイヤーにとって致命的なダメージ。しかもプレーヤーの資格停止。怒りに燃えた三村は、法律によるナマぬるい解決法を蹴って、自らの力による決着をめざし、事の発端の地である長崎へ飛んだ。[人情](C)徳間書店・東映