「この俺のどこが悪い。親無し子の、素性知れずの俺は、試合に勝っても、勝った男とは云えぬのか」小次郎は抑え切れぬ焦慮と怒りに悩み苦しんだ。豪士の娘・とねとの真実の愛に破れたのも、己の腕を試さんと福井藩物頭役・山崎左近将監たちと立ち合って、勝ちを得ながら追われたのも、幾多の道場に手合わせを求めながら白い目で報われたのも、ひとえに浪人・佐々木小次郎の薄幸の生い立ちゆえ…。真実の恋に破れ、「素性も知れぬ流れ者」という烙印を押されて放浪の歌日を続ける小次郎は、道中であ出会った作州浪人・宮本武蔵の剣に魂を奪われながらも、歌舞伎役者・お国と、その弟子・まんの愛によって人間らしい生活と幸せを取り戻していく…。(C)東映